まさか?呆れた首相官邸の旧広報体制
今回から「ニュースリリース編」をお送りする予定でしたが、今週あまりに面白いお話を聞く機会があったので、急遽予定を変更して、上記のテーマのお話をします。(ニュースリリース編はその後お送りします)
別に、おだてるつもりも、自民党支持でもありませんが、企業の広報戦略を考える上で、大変参考になると思うので、ここで紹介することにしました。
ご存知のとおり、この夏の総選挙で、自民党は大勝利を収めました。
「小泉劇場」と呼ばれるように、主役である首相のパフォーマンスが最大の要因であるのは疑いもないところですが、実は、その裏に周到な準備があったのです。
立役者は、もとNTT広報マン
その裏方を務めたのが、参議院議員で、もとNTTで広報を8年間担当していた、世耕弘成氏(42歳)です。
早大を卒業後、NTTに就職し、サラリーマンとしてずっと過ごしていくつもりだった世耕氏。おじの急死によって、突如政治家になることになりました。
永田町にやってきて、首相官邸に出入りするようになり、まずその広報体制のいい加減さに、驚いたそうです。
準備なしの首相コメント
テレビのニュースを見ていると、毎日のように首相のコメントが映し出され、大きな影響を及ぼしますが、森内閣までのずーーーーっとの間、誰も何もろくに準備をせずに、首相はそのときの気分で適当にコメントを記者たちに話していたのだそうです。
つまり、官邸のコミュニケーション機能がゼロ!だったことになります。
通常、首相は官邸の執務室から外出するときに、記者団に囲まれ、歩きながら受け答えをします。(「ぶら下がり取材」という)
さまざまな問題について、1国の首相としてのコメントを求められるのですが、これの事前準備がまったくされたことがなかった、というのです。
大事件が起きたときくらいに、秘書官がちょっとしたメモを差し入れる程度で、それを話していいのか、話したららどんな報道になり、どこに影響を及ばすか、といった価値判断や予測もまったくしていないまま、首相がなんとなくしゃべっていたのだそうです。
NTTの広報とのギャップにびっくり!
世耕氏はNTTで、リクルート事件、NTT分割論議、NTT株フィーバーなど良いほうも悪いほうも経験し、広報の重要性と、その準備の大切さを熟知していただけに、世界第二位の経済大国の首相が、まさかこんないい加減にコメントをしているとは思わず、腰が抜けるほど驚いたそうです。
NTTの場合、2週に1回ある社長の記者会見のために、1週間かけて準備するそうです。記者が最近関心を持っているテーマは何かを情報収集・モニタリングし、社内の各部署から答えを集めます。
そのうえで、広報が価値判断を加えて修正し、想定問答集を作成。それを社長に何度もレクチャーして、覚えてもらい、ようやく本番に臨んだのです。それほど手間ひま、神経を使っているのです。
それだけに、世耕氏は、「日本の首相の発言は、世界に報道され、影響を与える。一企業どころのレベルではない。これでは国益を損なってしまう!」と、危機感をおぼえ、首相官邸の広報機能を強化しなければ、と思い立ちます。
しかし、その道のりは、そう平坦なものではありませんでした・・・