社長コラム

朝日新聞の改革とは?

朝日新聞から「部」がなくなった

先日の朝日新聞をご覧になった方は、大きく「朝日新聞 こう改革します」と書いてあったことに、気がつかれたと思います。
昨年夏にあった、長野総局記者の総選挙にからむ虚偽メモ事件、最近の取材先から記者が多額の餞別をもらっていた事件など、不祥事を反省し、また同時に、今の時代状況に合わせるため、としています。
具体的には、まず、新聞を作る記者たちの編集局を刷新しました。

1・部を廃止し、グループ化
記者がこれまでのような部に所属するのでなく、編集局そのものに所属することにし、テーマによって、柔軟に取材態勢をとるようにしました。
先日お話をうかがった長谷川・経済部長によると、「縦割りの弊害があり、ずっと部に縛られた人事異動になりがちで、常に部長やOBを向いて仕事をしてしまっていた」といいます。
医療・教育・労働の3グループが新たに発足し、これまで社会部、生活部、科学医療部などにいた記者たち10数人ずつが、それぞれ配属され、責任者は人事権も編集権も持っていた部長ではなく、編集のみを担当する「エディター」になります。

編集局長2人制、モニター導入など

2・特別報道チームの編成
長谷川部長によると、今日の新聞に掲載されている以外にも、大きなネタを各部署から20人ほど選抜して追いかけるチームを作っています。スケート連盟の汚職や東横インの事件などをすでに手がけました。

3・編集局長2人制
今春から東京本社で編集局長を2人にしています。新聞社の編集局長といえば、記者全体と紙面全体を束ねる現場の最高責任者として、強力な権限を持っていますが、朝日では、人事などマネジメントを担当する「ゼネラルマネジャー」と、編集のみを担当する「ゼネラルエディター」に分けました。
ゼネラルエディターは、紙面つくりに専念でき、これまで5−6人が回り持ちで責任担当していたデスク会(翌日の紙面作成会議)を、ずっと1人で仕切ることになりました。

4・紙面モニターの導入
400人のモニターを募集し、毎週木曜日に、よい記事と悪い記事をあげて意見してもらいます。
また先日の紙面では、「記者の行動基準」を作成し、公表しています。
これまでは内規のレベルで、多くは1人1人の記者の良心に任されていた部分を、明文化したものです。

やっと動き出した朝日新聞社

従来は「唯我独尊」の色が濃かった朝日新聞ですが、内部のトラブルからようやく変化し始めたという印象ですね。一般企業のように、世の中や顧客のほうに顔を向けるようになった、といってもいいでしょう。
朝日新聞は、「多様性を尊重するリベラル」を標榜し、「ニュースに強く、読まれる記事」を目指しています。
経済記事については、「健全な経済合理性の志向を広める」ことをめざし、「正確さ(飛ばしをない)」「分析力(ストーリーで見る)」「問題設定(批判精神)」「表現力(歴史性、わかりやすさ)」を重視しています。
経済部(今日からは経済グループ)では、15のテーマでプロジェクトをつくり、内部で競い合う仕組みを設定しているとか。「日経の次に読まれる」ために、構造改革についても格差の弊害を指摘するなど、日経との違いを明確に打ち出すとのこと。
これからの朝日新聞と経済記事に期待したいものです。