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ダヴィンチ・コードのPR

映画の感想

話題の映画「ダヴィンチ・コード」(ロン・ハワード監督、トム・ハンクス主演)のお話をします。

公開初日から3日間の世界での興行収入が、2億2400万ドル(約246億円)を記録し、史上二位になったそうです。
(一位は「スターウオーズ エピソード3」)
「話が難しい」「疲労を感じる」(笑)といった感想も出ているようですが、
・キリスト教の歴史(ローマ時代の迫害、建前と本音の違った十字軍など)
・新約聖書(同名で何人もいるマリアさん、イエスは30歳で布教を始め、34歳で死亡など)
・ダヴィンチ(彼の文章はすべて反転文字=鏡で写し、右左が逆さまで書いてあるなど)
の知識が前提にないと、面白さが十分に理解しづらいかもしれません(日本人には手ごわい?)
サスペンスもの、としてなら、大丈夫かも。

私は、歴史・芸術的な面で楽しみました。ただ、やはり各場面に盛り込まれている、それらの事実が相当な量なので、もう一度じっくり味わいたいと思いました。

本との連動

原作が300万部売れた、とかも聞きましたが、それで思い出したのが、映画と本のメディアミックス(懐かしい言葉だ)を盛んに活用した、角川商法です。
ご存じない若い方のために、簡単に説明すると、角川書店はかつて、横溝正史、黒岩重吾などの作家の本を売るため、大きな予算を使った映画を制作し、派手な宣伝を、何作も繰り広げました。
キャッチコピーは、「読んでから見るか、見てから読むか」
作品は、「人間の証明」「野性の証明」「戦国自衛隊」「八つ墓村」「犬神家の一族」などです。
その後、角川春樹社長が転落してしまったので、いつのまにやら終了してしまいましたが、当時画期的なPR手法だったと思います。
薬師丸ひろ子などのスターも輩出しました。(けっこうファンだった。笑)
後で思い出せば、それほどの内容ではなかった気がするものの、当時のマスコミはこぞって大騒ぎし、ブームになり、商業的には大成功でした。
「ダビンチ・コード」も、原作の大ヒットと連携して、おおいに話題つくりを狙っています。

宗教論争もPRの1つ

とくに、話題となっているのが、新約聖書の解釈、これまでのキリスト教の常識に挑戦した部分です。

1.原作にある、イエス(キリストとは救世主=メシアのことで、彼の名前はイエスという)が、実は独身で終始したのでなく、妻がいて子供をもうけていた

2.ダヴィンチの「最後の晩餐」(ミラノの美術館にある。エプソンが補修資金を出した)に、男性の使徒(弟子)だけでなく、妻のマリア(母のマリアではなく、聖書では娼婦のマリアと書かれている人のほう)が描かれている

3.これらの事実をバチカン(ローマンカトリック教会)が、歴史的にねじまげてきたなどです。

原作ではこのあたりについて、相当の量を書き込んでいますが、映画では娯楽色を強めて、かなり圧縮してあります。
世界規模で大宣伝を繰り広げて上映を展開する以上、商業的により多くの人に見てもらえるよう、エンターテイメント性を強調するのは当然であり、イエスの最後のはりつけを延々と描き、かなりまじめな映画「パッション」(メル・ギブソン監督、04年)とは、だいぶ違っています。
批判を避けるため、というより、興行成績を上げるため、内容を変更した、といったほうが正確だと思います。
ただ、映画会社は、こうした宗教論争、宗教団体からの反発をたくみにPR=話題の盛り上げによる興味の引き付け、に活用しています。
芸能人が本来悲しいできごとのはずの離婚まで話題つくりにしてしまうように、人々の関心を集められればなんでもあり、ということです。

ビジネス的には、これが正しいわけで、その意味で、映画公開前に宗教論争が各国で巻き起こったのは、映画会社にとって、願ったりかなったりであったでしょう。したたかさで、巧みな現実主義を参考にしたいものです。