PRノウハウハウツー

記者にとってのネットと新聞の違いとは?

偉大なロイターがビジネスに呑まれる?

前回お話した、ロイターの買収劇は、同社の記者たち、さらには日本の記者にも動揺を与えているようです。
英BBCも、「150年以上もロイターは独立した偉大な報道機関だった。
しかしもうそうではなくなった。ロイターのジャーナリストは不幸だ」と述べています。
ロイターは世界130カ国以上に200の支局を置き、2400人の記者を配置し、世界中のニュースを提供しています。
ちなみに、国内メディアでは、最大規模の日経新聞ですら、35支局、170人の記者・現地スタッフにすぎません。(だから、日本メディアの国際ニュースだけではもの足りない、とよくいわれます)

経済情報はカネになる

とはいえ、すでにロイターの売上の9割は金融情報サービスでした。
現実から言えば、さらにビジネス拡大を目指した、といえなくもありません。
ニューズ・コーポレーションのマードック会長がいうように、「経済情報はカネになる」のです。
日本でも、日経が日経テレコンやクイックで利益をあげているほか、社団法人である共同通信(各新聞社の加盟料で成立しているので、営業活動できず)は、株式会社共同通信という別会社で、時事通信社もMAIN・JMSなどを提供し、金融情報で相当の収益を得ています。
世界的な金あまりの中、一瞬でも早く有効な情報を求める動きが加速しています。金融機関だけでなく、個人投資家も同じでしょう。

記者にとって、ネットと新聞という媒体の違い

ところで、記者にとって、ネットと新聞という媒体の違いは微妙にある、ことをご存知でしょうか?
早大の先輩で今は日経の支局長の方が、就職試験のとき、日経と共同とNHKのすべてに合格しました。しかも、すべて一番で!
その先輩に日経を選んだ理由を聞いてみると、「やっぱり書いた記事が残るのがいいよね」でした。
通信社は速報に重点をおき、どんどん取材したその場から記事を発信します。私が新聞記者のときは、「締め切りがなくて(時間に追われるので)、「紙面の印刷を待たなくて(待ち時間が長いので)いいなあ」と思いました。
が、当人たちにいわせると、「いつどの新聞・テレビに掲載するのか自分で決められない。どこに載ったか、あとにならないとわからん」とのことでした(あとで掲載された新聞が手元に送られてくる)。
テレビはご存知の通り、瞬間芸で、すぐに流れ去ってしまいます。そのため、「インパクト重視になり、深い掘り下げがしにくい」と記者はいいます。(これに限界を感じ、作家に転身する記者・ディレクターも多い)

ジャーナリズムとビジネスの距離

あとになって、私も一部を実感しました。
記者になってまもなく、日経でも速報サービス(クイック)が始まったので、私も新聞用と別に、同じネタで速報用記事も書いていたのですが、やはり事実関係のみのコンパクトな文章(数行)を求められ、「味気ない」、「記事を書いた気がしない」と思ったものです。
ジャーナリストとしてのやりがい、記録性がなく(ネットに載っても、すぐ消え、軽い気がする)、手応えのなさを感じてしまうのです。
ロイターの買収などで、メディアがどんどんビジネスライクになっていくのは避けられそうもなく、ネット革命はさらに進行します。日本も例外ではいられないでしょう。
もうかるのはネットのビジネス速報、でも記者の醍醐味は・・・
単なるレポーターでは、職業としての興味も減るでしょう。
ビジネスとジャーナリズムのハザマで、今後、マスコミにおいて、大きな課題になりそうです。