社長コラム

王子製紙、敵対的TOBに

北越製紙との経営統合を目指していた王子製紙が、ついに敵対的TOB(株式公開買い付け)を、実施すると発表しました。
2006年7月初めに経営統合を申し入れしたものの、北越が拒否。
北越は、三菱商事による出資・業務提携を受け入れることにしました。
業を煮やした王子は、ついに「友好的段階を過ぎた」として、強引に買収に乗り出すことにしました。

成功例がないTOB。製紙業界の事情

2003年のスティールパートナーズによるユシロ、ソトー買収に始まり、村上ファンドの阪神、ドンキホーテのオリジン東秀まで、今までいくつもTOB案件が出たものの、成功例はいまだありません。
しかも今回はファンドではなく、同じ業界の最大手による、業界再編を狙った買収劇であり、いままでとは様相が違います。
私は日経新聞記者時代に、製紙業界の担当もしていましたが、製紙業界は、素材産業の典型で、成熟期のジレンマに陥っています。

・価格競争激化による、単価下落
・市場はこれ以上拡大しない
・重油などの原燃高で、製造コスト上昇
などです。

メーカーの数を減らして、価格統制力を高め、スケールメリットを活かして、原料の調達コストを下げるという王子に狙いは、実はしごく当然でもあります。

三菱よりは王子ベター?

これまでTOBは「タブー」とされ、「下品な乗っ取り」ともいわれてきましたが、業界の盟主であり、日本を代表する大企業の王子が乗り出したことで、常識が変わりそうです。
客観的に考えると、北越にとっては、三菱商事とよりは、王子との方が、シナジー効果を生み出すでしょう。
とはいえ、「急にいわれても・・・」という株主も多く、話は単純でもないので、まだまだ紆余曲折がありそうです。
再編が急務なのは、製紙だけでないので、他に与える影響は大きいです。
製鉄のミタル・スチール(オランダ)によるアルセロール(ルクセンブルグ)敵対的買収の例も最近あったように、世界的な動きでもあります。
大型のM&Aについて、しばらく目が離せそうにありません。

王子製紙TOB苦境の理由
王子製紙による北越製紙の敵対的TOB(株式公開買い付け)は、逆に王子が追い込まれています。 つらつらと、理由を考えてみました。 どうも図式の描き方を間違ったような気がします。 マスコミ的に見ると、業界の盟主・巨大企業の王子が、地方企業で小さ...