日経社員逮捕
日本経済新聞社広告局の社員が、東京地検特捜部に逮捕されました。
容疑は、証券取引法違反(インサーダー取引)で、証券取引等監視委員会(SEC)の告発を受けたものです。
この社員は、2005年12月から2006年2月にかけて、日経新聞に掲載された、5社の株式分割などの法定公告の掲載前後にこの会社の株式を売買、3000万円の利益を得ていた、とされています。
福井・日銀総裁が株式投資で利益を得ていたと批判されていますが、その金額が1500万円なので、その2倍に相当します。
昨日の記者会見で、会社側は、「2ケタ以上の銘柄で、数千万円の利益をあげていた、という認識だ」と話しているので、実際にはもっと多いようです。
デイトレーダーだった
この社員は株式取引が趣味で、1日100回以上の売買をしたこともある、業務時間中に取引したこともある、などと話しているので、これはもう典型的なデイトレーダーです。
取引の詳細をみてみると、信用取引とはいえ、4500万円、1億円、4000万円といった購入金額が並んでいるので、それまでも相当な金額での大口取引を繰り返していたといえます。(信用取引の上限額は、それまでの取引額に応じて設定される)
とても「ちょっとした出来心で・・・」というような金額ではないようです。
だからこそ、目立ってしまい、SECが知るところとなったのでしょう。
これだけ頻繁な売買を繰り返していたなら、もっと以前に社内、彼の周囲で、「おかしいな?」と気がつき、注意する人がいなかったのか、という点は、非常に残念に思います。
報道自粛?
私がこの事件で懸念しているのは、現場の記者たちが、取材活動への意欲をにぶらせてしまうのではないか?ということです。
2003年に、鶴田前社長がらみの子会社不正経理事件が起きたときもそうですが、なにかきわどいテーマがあって取材にでかけたとき、
「日経にそんな追及をする資格があるのか」
「人のことを批判する前に、自分の会社を正せ」
などといわれ、ひるんでしまうケースがあったようです。
今回の件でも、あるテレビ局の記者が、「最近東京地検特捜部が摘発した、水谷建設の問題で、日経社会部が、つかんでいる事実をなぜか記事にしていない。インサイダー事件の影響で、特捜部に遠慮しているのではないか?」
といった意見を話してくれました。
こうなると、報道機関としての根幹にかかわる問題で、日経は取材活動において、かなり制限を自ら設けてしまったことになります。
ジャーナリズムの拠って立つ基盤が、揺らいでしまいます。