社長コラム

ライブドア・ショック その3

おカネと価値観

土日のテレビ番組から

土日のテレビ各局の社会情報番組は、こぞってライブドア問題を取り上げました。
印象に残った発言をいくつか拾ってみます。多くの友人・知人が出演していました。
(   )内は伊藤との関係です。

※「朝まで生テレビ」(司会・田原総一朗・・・マスコミの師匠です)
菅直人・元民主党代表(かつて選挙や、厚生大臣のときのブレーンをしていました:
「政治家を20年やって、官僚・政治家・マスコミのなかで、マスコミが一番パワーがあるとわかった。しかしマスコミの人は自覚していない。そこが問題だ」
・・・自らもマスコミによって有名になり、また振り回されただけに、説得力がありました。
板倉雄一郎・元経営者。著書「社長失格」など(知人。下の名前が同じなので紹介された):
「投機と投資は違う。ただ儲ければいいのが投機、経営データを綿密に分析して中長期で資金を預けるのが投資」
・・・ITベンチャー経営者の先駆けでありながら、勢いあまってマイクロソフトに反抗し、つぶされてしまった経験があるので、堀江氏を理解はできるようです。
須田慎一郎・経済ジャーナリスト
「沖縄で死亡した、もと腹心の部下は本当に自殺なのか?闇の世界との関係もあったのではないか?ばく大な利益を短期間にあげるIT企業には、企業舎弟も入り込んでいる」

※「みのもんたのサタデーずばッと」
下村健一キャスター(元TBS。学生時代の友人)
「ライブドアニュースのなかに、PJ(パブリック・ジャーナリスト)という制度があり、全国のそれぞれの専門分野を持つ人がライブドアと契約して、レポートを書いている。
「市民記者」ともいうべき存在で、活動についてはライブドアの支配を受けず、一線を画した、ユニークな活動をしている。自らメディアを保有しようとした堀江氏の一環だが、これは従来メディアにない可能性を感じさせる」
山崎元・経済評論家(知人。いま彼の本を製作中)
「株式市場は乱高下して、ゲームとして面白いが、ライブドア株には手を出さないほうがいい」

雑誌・新聞の紙面から

※日本経済新聞「核心」
田勢康弘コラムニスト
「(脱偽善だと思う。偽悪に近いが、建前ばかりより、失うものがないようなストレートな物言いのほうが受ける。小泉首相も、お笑いもそう、という成毛真インスパイア社長の弁を引きながら)、
カネで人の心も変える、というのは間違っている、というべきなのだが、われわれもどこかで買えるかもと感じている。若者からすれば、みな平等といわれるより、格差を認めようという言葉に真実味を感じるだろう」

※週刊ダイヤモンド「プリズム」
(ダイヤモンドには5年間連載を書いていました。著書「金融生き残り戦争」も出版)
辻広雅文編集長
「私たちには今、十数年に及ぶ米国型市場主義改革の疲れからか、経済低迷を抜け出した安堵と自信からか、日本的経営や伝統的心情への反動的回帰が芽生えている。加えて、若きIT長者たちへの嫉妬がくすぶり、政財界には新興勢力への嫌悪がある」
「村上龍氏の言葉を借りれば、カネ儲けを単純な善悪に言論で論じ、いつまでも利益追求とモラルの関係を整理できない私たち日本人の未成熟を思い知らされる」

オピニオン

明治維新、太平洋戦争後に続く、近代歴史上3番目の価値観の転換期、もっといえば、初めて明確な共通目標がない時代にあって、ライブドア事件・堀江発言の数々は、日本人が迷っていることを改めて浮き彫りにしました。
あいまいなままにやり過ごしてきた、お金や生き方などへの考え方を、問い直しているともいえるでしょう。
アメリカには「リッチ&フェイマス」(お金持ちになって、有名になることが偉い)という単純明快な価値観があり、市場型経済の促進パワーになっています。
ヨーロッパには「ノブレス・オブリュージ」(社会的地位や収入のある者は、重い責任をとらなければならない。
たとえば戦争のとき、前線指揮官として死亡率が異常に高い。それが誇り)という伝統的な貴族の価値観が、今も息づいています。
アラブ・中東・インドなど国によっては、宗教がすべてのバックボーンとなっており、日常生活の規範にまで行き渡っているところもあります。
無宗教で、経済的には世界第二位の豊かさだけれど・・・、という宙ぶらりんな状況をぼちぼち変えていかなければならないのかもしれません。2007年問題の主役である団塊世代は、学生運動で体制に反抗したものの、結局飲み込まれてしまい、まもなく卒業しそうです。
靖国問題やお金とはなんぞや?という、ごく基本的なテーマについても、日本人は戦後60年ずっと真剣に考えず、結論をだすことはせずにきました。
なんとなく問題が起きると騒ぐものの、そのうち忘れてしまいます。
すでに経済的には中国に追い越されることが確実になり、少子高齢化によって国力が徐々に衰えていくのは間違いないでしょう。ただ、そのなかでも、世界で存在感を示し続け、独自の地位を保つには、なにより我々1人1人の覚悟と、明確なポリシーが求められるでしょう。
自分自身もまた、これを機会に改めて、問い直してみようと思います。

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